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デザイン思考でクリエイティブな問題解決を

デザイン理論家のホルスト・リッテルが提唱した「ウィキッド・プロブレム(意地悪な問題)」とは、複雑で多面的な問題を指す言葉です。ウィキッド・プロブレムはデザイン思考の発展の原点となる概念です。従来の問題解決の枠組みでは、どうしても不十分でした。

デザイン思考は、ビジネスを経営する上で最も複雑で重荷となる問題を解決するための方法論です。

デザイン思考は、さまざまな状況に適用可能な、クリエイティブな問題解決ツールです。多角的な思考経路をたどることで、問題の核心に迫り、クリエイティブな解決策を思いつくことが可能になります。

デザイン思考には、5 つのステージがあります。「共感」「定義」「アイデア化」「試作」「テスト」です。

これらのステージは、同時に行われることもあれば、順不同に行われることもあり、さまざまな組み合わせで繰り返されることもあります。


共感

共感は、ユーザーとそのニーズを知るステージです。このステージは、デザイン思考に「人間中心」の視点をもたらします。ユーザーを観察し、ユーザーに質問し、ユーザーから学ぶことが含まれます。定義があいまいな問題を明確化するため、ユーザーを観察し、ユーザーと積極的に関わることが求められます。

 

定義

定義は文字通り、問題を定義するステージです。前のステージで集めた、ユーザーに関する全ての情報を基に、実行可能な命題を作ります。このステージを通して、質の高いソリューションを数多く生み出すために、問題の定義を絞り込むのです。「意義を見いだす」ステージだと考えましょう。

 

概念化

概念化は、チームで可能な限り多くのアイデアを考えるステージです。アイデアを生み出すのであって、それを評価してはいけません。良いアイデアを得るためには、評価に左右されない自由な発想が必要です。

 

試作

試作のステージでは、素材を手に取りデザインを始めます。試作品は、シンプルで安価なものでなければいけません。早く失敗し、速やかに解決策を見つけることが大切です。

 

テスト

テストのステージでは、ユーザーに複数の試作品を提供し、ユーザーの反応に耳を傾けます。これは再び共感する機会にもなります。ユーザーがどのように試作品を操作するかを見ることで、ユーザーのニーズをより詳しく知ることができます。これにより、命題の作り方が誤っていたことに気づくことができ、定義のステージに戻ってユーザーのニーズをより効果的に満たす方法を検討し直すきっかけを与えてくれます。


デザイン思考は、いわゆる「意地悪な問題」の解決策を提供してくれるものです。意地悪な問題は、定義が定まりにくく、人を消耗させるものですが、ビジネスに有害な影響を与える可能性があります。IBM、MassMutual、Infosys、Fidelity、Intuit などの大企業は、デザイン思考を認識し、活用しています。彼らにとってデザイン思考とは、革新的なアイデアを生み出すために必要な刺激なのです。そのため、各企業は社内にイノベーションラボを設置したり、デザイン思考のプロセスの導入を支援する外部企業と協力したりしています。

デザイン思考は、さまざまなビジネスで活用できます。

  • Apple 社:デイブ・エヴァンスは Big Think によるインタビューで、コンピューターのマウスを設計する際にデザイン思考を活用した経験を語っています。
  • Tesla 社:Tesla は、デザイン思考によるイノベーションプロジェクトに参加しました。イーロン・マスクと彼のチームは、自社製の電気自動車をより日常生活に適したものにしたいと考え、より現実的な航続距離(約 354 〜 500 km)の電気自動車を設計し、一般家庭のコンセントで使える充電アダプターを提供しました。
  • Airbnb 社:Airbnb は、デザイン思考により、つぶれかけのスタートアップを立て直しました。

デザイン思考の本質は、その人間中心の手法にあります。創造性とユーザーのニーズを組み合わせて、そもそも定義があいまいであった問題の解決策を導き出すのです。

例えば、皆さんの会社で、社内でのキャリア形成支援がうまくできていないとしましょう。社員の能力開発や昇進の機会はあるのに、昇進を目指さすよりも辞めることを選ぶ人が多いという問題を抱えています。そこで、チームを編成して調査を行いました(共感)。社員が参照するべき資料が置かれている従業員向けポータルサイトを操作している様子を観察したところ、デザインチームが考えていたほど直感的ではないことに気づきました。従業員に意見を聞くと、能力開発や昇進の機会についての記述が一切見つからなかったため、制度自体が存在しないと思っていた、という反応が返ってきました。

こうして、解決するべき問題は、使い勝手の悪い従業員向けポータルサイトにあることに気づきました(定義)。調査チームは、解決策のブレーンストーミングを始めます(アイデア化)。良いものも悪いものも含め、多くのアイデアが出ました。そこで、デザインチームを募り、試作サイト作りを開始しました。チームメンバーは紙と鉛筆を手に取り、使い勝手の良いホーム画面のデザインを始めました。しばらくすると、簡素なウェブサイト(試作)が出来上がりました。試作サイトを社員に共有したところ(テスト)、検索機能がウェブサイトで最も重要なポイントであることが判明します(共感と定義)。

この情報を基に、従業員向けポータルサイトを一から再設計し、優れた検索機能を備えた、より使いやすいものにしました。仕事にまつわる研修プログラムが探しやすくなり、社内公募の検索機能も充実しています。すると、離職率がすぐに下がりました。

デザイン思考は、職場で発生するあらゆる種類の問題に適用できます。問題の真相を突き止め、思いもよらないアイデアを生み出すのに最適な方法です。これがデザイン思考の力です。内に秘めたクリエイティブな問題解決能力を開花させ、意地悪な問題に最高の解決策で対処することができるのです。